【コラム】 トリップ・ホップ深掘り:Massive Attack / Portishead / DJ Shadow / DJ Krush

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【コラム】 トリップ・ホップ深掘り:Massive Attack / Portishead / DJ Shadow / DJ Krush

Triphop 年代別おすすめ、逸話、ドキュメンタリーまで”

文:mmr|テーマ:トリップ・ホップ(アブストラクトヒップホップ)年代別のおすすめ作品、現場で語られる逸話や伝説

トリップ・ホップ(アブストラクトヒップホップ)は、サンプリング/ターンテーブル文化と映画的な音響感覚が混ざり合ったジャンルです。ここでは Massive Attack、Portishead、DJ Shadow、DJ Krush の4組について、年代別のおすすめ作品、現場で語られる逸話や伝説まで掘り下げます。


トリップ・ホップ(アブストラクトヒップホップ)の歴史と現在

1990年代のイギリス・ブリストルで生まれた トリップ・ホップ(Trip-Hop) は、ヒップホップのリズムを基盤にしつつ、ダウンテンポ、ダブ、ジャズ、アンビエントなどを融合させた独自の音楽スタイルです。
Massive Attack、Portishead、Tricky といったアーティストが牽引し、映画的でメランコリックなサウンドは「アブストラクトヒップホップ」とも呼ばれました。

トリップ・ホップは単なる音楽ジャンルを超え、サウンドトラック制作やファッション、現代アートの世界にまで広がり、やがてAI音楽生成の時代にも新たな可能性を秘めています。


トリップ・ホップの系譜

flowchart TD A["1990s: ブリストル誕生\nMassive Attack"] --> B["Portishead: Noirなサウンド"] B --> C["Tricky: ヒップホップとの融合"] C --> D["2000s: DJ ShadowやUNKLE\nサウンドトラック制作へ拡張"] D --> E["2020s: AI音楽生成との接続"]

年代別おすすめ

flowchart LR MA90["Massive Attack: 1990s\nBlue Lines / Protection / Mezzanine"] MA00["2000s\n100th Window / Live works"] MA10["2010s\nHeligoland / サウンドトラック活動"] SH90["DJ Shadow: 1990s\nEndtroducing....."] SH00["2000s\nThe Private Press"] SH10["2010s〜2020s\nThe Less You Know... / Our Pathetic Age"] PK90["Portishead: 1990s\nDummy / Portishead"] PK10["2008 Third\n実験性の深化"] KR90["DJ Krush: 1990s\nStrictly Turntablized / Meiso"] KR00["2000s〜現在\nJaku / Saisei - 日本的要素の統合"] MA90 --> MA00 --> MA10 SH90 --> SH00 --> SH10 PK90 --> PK10 KR90 --> KR00

代表的なアーティストと作品


Massive Attack(マッシヴ・アタック)

代表作

1990s: Blue Lines(1991)Protection(1994)Mezzanine(1998)

2000s: 100th Window(2003)

2010s〜: Heligoland(2010)、映画サントラへの楽曲提供

逸話

ブリストルのサウンドシステム「Wild Bunch」から派生。3D(Robert Del Naja)はストリートアート界隈(バンクシーとの関係も噂)でも有名。

制作技術

ターンテーブルよりも「スタジオを楽器化」し、サンプルと生演奏をブレンド。重厚な低音とダブ的な空間処理が特徴。

映像作品

Unfinished: The Making of Massive Attackなど短編ドキュメンタリーが存在。ライブ映像は公式YouTubeでも視聴可。


Portishead(ポーティスヘッド)

代表作

1990s: Dummy(1994)Portishead(1997)

2008: Third(実験色の強い復活作)

逸話

Beth Gibbons のアンニュイなボーカルは、ステージ上での緊張感や孤独感がそのまま音に投影されていると語られる。

制作技術

ターンテーブル+生楽器の融合。サンプリングとアナログ録音を重層的に使い分ける。

映像作品

「Welcome to Portishead」など90年代ツアーのドキュメンタリーあり。


DJ Shadow(DJシャドウ)

代表作

1990s: Endtroducing…..(1996)

2000s: The Private Press(2002)

2010s〜: The Less You Know, The Better(2011)Our Pathetic Age(2019)

逸話

Endtroducing….. は「サンプルだけで構築された初のアルバム」としてギネス記録に。MPCとターンテーブルを駆使して完成。

制作技術

ブレイクビーツ再構築、ビートジャグリング、タイムストレッチを駆使。ターンテーブルを“コラージュツール”として扱う。

映像作品

DJ文化ドキュメンタリー『Scratch』(2001)に出演。


DJ Krush(DJクラッシュ)

代表作

1990s: Strictly Turntablized(1994)Meiso(1995)

2000s〜: Jaku(2004)、近年は和楽器や日本的サウンドとの融合

逸話

世界ツアーを通じて「日本的静謐さ」をグローバルに提示。欧米ヒップホップシーンからもリスペクトされる存在。

制作技術

ターンテーブルを“楽器”と捉え、和楽器や環境音との融合を試みるスタイル。スクラッチだけでなく空間演出に特化。

映像作品

DJ文化ドキュメンタリー『Scratch』(2001)に出演。 「History Of DJ Krush」などアーカイブDVDあり。


サウンドトラック制作 × AI音楽生成

トリップ・ホップの映画的な質感はサウンドトラック制作に最適。近年はAI音楽生成ツールが、トリップ・ホップ風の「ダークな浮遊感」を短時間で再現できるようになりました。映像制作者にとって、AIと人間の共同作業は新しいクリエイションの可能性を広げています。


まとめ

トリップ・ホップは、Massive Attackの重厚さ、Portisheadのアンニュイ、DJ Shadowのサンプル美学、DJ Krushの日本的静謐さを通じて発展しました。 そして今日では、AI音楽生成やサウンドトラック制作と結びつき、新たな時代へと進化しています。


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