
テクノの発祥から現在まで ― 名盤と機材でたどる年代史
文:mmr|テーマ:テクノの年代ごとの時代背景・代表的な名盤・機材の変遷
テクノの歴史は「都市」と「機械」の関係性から生まれ、進化してきました。以下では、年代ごとの時代背景・代表的な名盤・機材の変遷をまとめます。
1970年代:胎動 ― 電子音楽とディスコが下地をつくる
時代背景
- シンセサイザーが小型化・量産化
- ディスコ文化の成熟
名盤
- Kraftwerk – Trans-Europe Express (1977)
- Donna Summer – “I Feel Love” (1977, prod. Giorgio Moroder)
- Yellow Magic Orchestra – Solid State Survivor (1979)
機材
- Moog/ARP/EMS モジュラー
- Roland CR-78
- Maestro Rhythm King
1980年代:デトロイトの誕生と欧州への伝播
時代背景
- デトロイトの工業都市化と若者文化
- MIDI(1983)登場、デジタル機器の普及
名盤/トラック
- Cybotron – “Clear” (1983)
- Model 500 – “No UFOs” (1985)
- Rhythim Is Rhythim – “Strings of Life” (1987)
- Inner City – “Big Fun” (1988)
機材
- Roland TR-808 / TR-909 / TB-303
- SH-101 / Juno-106
- Yamaha DX7
- Akai S900/S950
- Atari ST + Cubase/Notator
1990年代:世界的拡張 ― ベルリン、UK、セカンド・ウェイヴ
時代背景
- ベルリンの壁崩壊(1989)後、Tresorなどが拠点化
- UKレイヴ文化とクラブ化
名盤
- Underground Resistance – X-101 / X-102(1991–)
- Aphex Twin – Selected Ambient Works 85–92(1992)
- Basic Channel – BCD(1994)
- Robert Hood – Minimal Nation(1994)
- Plastikman – Sheet One(1993)
- Jeff Mills – “The Bells”(1997)
機材
- Akai S3000/S3200
- E-mu ESI/E4
- Ensoniq ASR-10
- Mackie 1604/8-Bus
- Roland JP-8000
- Access Virus
- ADAT / DAT
2000年代:ミニマル〜ミクロハウスと“イン・ザ・ボックス”の夜明け
時代背景
- PC制作が普及、VST一般化
- ケルン、ベルリン、チリ系アーティストが牽引
名盤
- Ricardo Villalobos – Alcachofa(2003)
- Monolake – Gravity(2008)
- Kompakt – Total シリーズ(2000–)
-
Richie Hawtin – *DE9 Closer to the Edit*(2001)
機材
- Ableton Live(2001–)
- Reason(2000–)
- Native Instruments Reaktor / Absynth
- Elektron Machinedrum / Monomachine
- Pioneer CDJ(普及期)
2010年代:インダストリアル/ピークタイム回帰とモジュラー復興
時代背景
- Berghain/Ostgut Tonを中心に世界標準化
- Bandcamp直販、DIYリリースの加速
- Eurorackブーム
名盤
- Marcel Dettmann – Dettmann(2010)
- Objekt – Flatland(2014)
- Helena Hauff – Discreet Desires(2015)
- Surgeon – From Farthest Known Objects(2016)
- Skee Mask – Compro(2018)
機材
- Eurorack(Mutable Instruments, Make Noise, Intellijel)
- Elektron Octatrack / Analog Rytm
- Roland AIRA TR-8
- Korg Volcaシリーズ
- Ableton Push
2020年代:ハードグルーヴ再燃、ハイブリッド・ライブ、AI補助の時代
時代背景
- パンデミック期の配信文化後、現場回帰
- BPM高速化、トランス再評価
- AIによる制作・マスタリング補助
サウンド傾向
- 強力なキックとリフ反復
- ハードテクノ~シュランツ再起
- トランス的モチーフの再文脈化
機材
- Elektron Digitakt / Digitone
- Roland TR-8S / MC-707
- ASM Hydrasynth
- Polyend Tracker / Dirtywave M8
- Akai MPC One/Live II
- AIマスタリング、ステム分離ツール
機材の“大系的変遷”まとめ
- 1980s:x0xの血統 – 808/909/303+アナログモノシンセ
- 1990s:サンプラー時代 – Akai/E-mu+ミキサー+アウトボード
- 2000s:イン・ザ・ボックス – DAW+VST
- 2010s:ハイブリッド回帰 – モジュラー×DAW
- 2020s:リアルタイム+AI補助 – ステム分離/配信前提
10年ごとの要聴盤リスト
- 1970s:Kraftwerk – Trans-Europe Express
- 1980s:Model 500 – “No UFOs”/Rhythim Is Rhythim – “Strings of Life”
- 1990s:Basic Channel – BCD/Plastikman – Sheet One
- 2000s:Villalobos – Alcachofa/Monolake – Gravity
- 2010s:Objekt – Flatland/Skee Mask – Compro
- 2020s:ハードグルーヴ/トランス再燃の新作群
まとめ
テクノの核は「反復」と「音響設計」。
x0x直系のリズム、サンプラーの音像設計、PC時代の編集美学、モジュラーの偶発性、AI補助まで――時代が変わっても機械と都市のリズムは進化し続けています。
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