【コラム】 K15 ― EGLOが育んだロンドン新世代の光と影

Column 10s Broken Beat Deep House House
【コラム】 K15 ― EGLOが育んだロンドン新世代の光と影

はじめに — なぜ今 “Eglo × K15” か

文:mmr|テーマ:EGLOの主要アーティストK15の歩み、音楽観、代表曲「Sunbeams」を中心に紐解く

ロンドンの地下音楽シーンにおいて、K15(本名:Kieron Ifill)という名は、クラブ・ミュージックとスピリチュアル・ジャズの狭間を優雅に行き来する存在として認知されてきた。彼の音楽は、ハウス、ブロークンビート、ジャズ、ソウル、エレクトロニカといったジャンルを横断しながらも、常に清らかな「温度」を宿している。
その実験性と温かさの両立は、EGLO Recordsというレーベルの美学とも驚くほど近い。

クラブ/ダンスミュージックのシーンでは、しばしば「流行」や「ジャンルの浮き沈み」が語られる。しかし、その中で時代を超えて残るレーベルや作品には、単なるトレンド以上の「思想」や「コミュニティ」が宿っている。

Floating Points と Alexander Nut によってロンドンで設立された Eglo Records は、そうした “継続性と多様性” を重視するインディペンデント・レーベルの代表格だ。

その Eglo のカタログの中で、K15 の『Sunbeams』は、ハウス/ブロークンビート/ラテン/ジャズの要素をあわせ持つ異色かつ象徴的な作品だ。なぜこの作品が生まれ、どのような意味を持つのか──その背景と文脈を掘ることは、Eglo の全体像、そして現代のダンス/ジャズ/ソウルの横断地帯を考えるうえで重要である。

本稿では、K15の音楽的背景、EGLOとの接点、作品ごとの進化、そして象徴的トラック「Sunbeams」まで、事実に基づいたロングコラム形式で徹底的に掘り下げていく。


ロンドンにおけるK15の位置づけ

K15はロンドンの地下音楽コミュニティの中で、クラブDJ、鍵盤奏者、ビートメイカーとして広く活動してきた。ハウスやテクノの文脈以上に、ジャズとクラブ・ミュージックの橋渡しをする存在として認識されている。

彼の特徴は、クラブの強度を保ちながらも、旋律的にはスピリチュアル・ジャズの薫りを漂わせる点にある。
ロンドンの新世代ジャズ・ムーブメントが可視化される以前から、K15はその萌芽を自身の作品に内包していた。


EGLO RecordsとK15

■ EGLOとは

2009年、Floating Points と Alexander Nutによって設立されたEGLO Recordsは、ロンドンの多様な音楽文化を束ねるハブのような存在となった。ジャズ、ソウル、ディープハウス、ブロークンビートが自然に混ざり合うシーンを象徴するレーベルだ。

■ K15とEGLOの接続

2010年代半ば、K15はEGLOのアーティスト群と共鳴しながら独自の音楽を展開するようになる。彼の暖かいコード進行、流麗な鍵盤、柔らかなドラムプログラミングは、レーベルの持つオーガニックな空気感に強くマッチした。


初期作品と音楽的基盤

K15の初期作品は、ローファイな質感のブロークンビートや、鍵盤中心のジャジー・ビートが多い。
この時期から既に、

  • 細やかなハイハット
  • 丸みのあるキックドラム
  • 印象的なエレピのコード
  • スピリチュアルな上昇感
    といった特徴が見られた。

こうした美学が後にEGLO作品で強化され、より洗練されていく。


K15の音楽美学:ジャズと電子音楽の統合

K15の音楽を語る上で外せないのは、ジャズの語法をクラブミュージックに自然に統合する能力である。

  • コード進行はジャズ的
  • リズムはブロークンビートやディープハウス
  • テクスチャはソウルフルで有機的

音楽理論よりも「音の温度」や「人の気配」を重視しているような作風で、デジタルプロダクションでありながら生演奏的な手触りが残されている。


象徴曲「Sunbeams」徹底分析


K15の代表曲として語られることの多いのが、「Sunbeams」である。
この曲は彼の美学を最も純度高く凝縮した作品として位置づけられている。

■ 曲の構造

  • エレピの柔らかなコードが基盤
  • 透明で丸いハイハット
  • 深いベースライン
  • 浮遊感のあるパッド
  • 光が差すような上昇メロディ

全体が「日差し」というテーマに沿ったように、暖かさ、希望、清涼感を同時に持っている。

■ なぜ象徴的なのか

K15が得意とする

  • “温度のある電子音楽”
  • “クラブの身体性”
  • “ジャズ的な開放感”
    が完璧なバランスで融合しているからだ。

代表作の流れ:EP・コラボレーション史

K15はソロ作品だけでなく、シンガーやジャズ奏者とのコラボも多く、活動の幅は非常に広い。ビートメイカーとしての繊細さと、鍵盤奏者としての旋律センスが融合することで、各作品に「K15らしさ」が自然に現れる。

ここでは主要な活動を年表と共に整理する。


年表:K15活動履歴

timeline title K15 活動年表 2000s : 初期作品の制作開始、ロンドンのクラブでDJとして活動 2010-2013 : ジャジー・エレクトロニック作品を自主/小規模レーベルから発表 2014 : シーンで注目され始める 2015 : EGLO Records と関係が深まり、作品への参加が増える 2016-2019 : EP・コラボレーション多数、「Sunbeams」など代表曲が広く評価される 2020s : ロンドン新世代ジャズとクラブミュージックの架け橋として位置づけられる

音楽的系譜と影響図

flowchart TD A[ジャズ
Spiritual Jazz / Fusion] --> C[K15] B[クラブミュージック
House / Broken Beat] --> C D[Soul / R&B] --> C E[EGLOの音楽的美学] --> C

EGLO以降:現代UKシーンにおけるK15の立ち位置

K15は、ロンドンのジャズ再興期にも自然に組み込まれたアーティストである。クラブとジャズの境界が曖昧化していく中、彼の音楽はその流れを象徴するひとつのモデルケースとなった。

  • クラブでの機能性
  • ジャズの調性感
  • ソウルの暖かさ
  • 電子音の柔らかい質感

これらを共存させる彼の手法は、後続世代にとって「作り方のヒント」として影響を与えている。


結語:K15が照らす“Sunbeams”の意味

K15の音楽は、常にどこか「人の体温」を感じさせる。
その象徴が「Sunbeams」であり、光の粒子のような音が聴く者を包み込む。

EGLO Recordsの文脈においても、K15は“暖かさ”と“実験性”の両面を象徴し続けている。
ロンドンの文化多様性、ジャズ再興、クラブの身体性が1本の線で結びつくとき、その中心にはいつもK15の静かな光がある。


Monumental Movement Records

Monumental Movement Records

中古レコード・CD・カセットテープ・書籍など